2011年10月12日水曜日

東京アート研修 その三。

東京アート研修、三日目!
この日は朝に品川駅で母と合流し、
初日に無念にも休館だった原美術館にリベンジ。
 閑静な住宅地になじむような質素な外観。
「アート・スコープ2009-2011インヴィジブル・メモリーズ展」という展示をやっていました。
最初の展示スペースにどどんと配置されていたヤン・シャレルマンの作品をみて
一気に異空間にすべりこむ感覚を得ました。
工業素材を用いて抽象的な形態と鮮やかな色彩で
力強くも神秘的な表現で作品をつくりあげ、
そこには観るものに「なにか」を想起させるような、
沈んだ記憶を浮かび上がらせるような、何かに動かされる強い印象を受けました。
小泉明郎のヴィデオアートは今でも頭にこびりついています。
戦争の時代、特攻隊として旅立つ決意を母親に伝える息子の映像、
それから戦争で夫をなくした妻の、夫が亡くなる前と後との映像。
演劇的手法をとりいれているけれど、あの異空間が非現実を思わせない。
観る者の胸を痛く締め付ける悲壮感が忘れられません。
前者の映像は、小部屋で流されていましたが
その部屋を出てもその役者の叫び声が強烈に響き渡っており
それはまるで逃げたい現実から逃げられないような感覚。
後者の映像は、表側は夫を亡くしてなお夫に語り続ける妻の様子が流れ、
裏に回ると、夫がいた頃の会話の様子と夫が亡くなる瞬間の映像が流れていました。
たったひと組の夫婦の物語が、壮大な戦争のすべてを語っているようでした。
 原美術館のカフェテラスをこえた先の庭。
小さくしか写ってませんが、野外彫刻がぽつぽつと並んでいました。
晴天だったのでひとつひとつが光を放っていてとっても綺麗でした。

そして電車に乗って横浜へ!
品川から30分もせず着くんですね!
現在開催中の「横浜トリエンナーレ」。
国内外のビッグなアーティストの作品が集結しています。
 横浜のみなとみらいあたりに位置する横浜美術館。
とにかく周りのビル街が綺麗。東京みたいにごちゃごちゃもしていないし、
空も広いし、海もそばに見えるし、こんなところに住めたらなーと思います。
 こんなんがたくさん並んでました。
ウーゴ・ロンディノーネの作品。
こっちまで同じ顔つきを真似したくなってしまう豊かな表情が面白い。
 こんな感じで会場はとっても広かったです。
作品数があまりに多くて、たくさん写真を撮ったのですが
ほんの一部しか紹介できないことを悔やみます。
 トビアス・レーベルガーの作品。
天井からぶらさがった59個のランプは、
ネットを通じて横浜に住む子供達の部屋と繋がっているのだそう。
部屋の点灯ランプがつくと作品の光りが消え、
子供がスイッチを切ると作品に光りが灯るようになっています。
現在進行形で人間のアクションと繋がっている作品であり、
それを知ったのちにこのきらきらしたランプを眺めると
ひとつひとつの灯りがまるで子供の生命力であるかのようなとても重い意味を感じさせます。
 ミルチャ・カントルの作品。ポスターの写真にもなってます。
何人もの女の人が、列になって白い砂の上を歩き、
箒で前の人の足跡をひたすら消していく映像。
人生は塗り替えられるということでしょうか。
消されては生まれ、消されては生まれ?
でも作品のタイトルは直訳だと「幸せの追跡」。
あてもなく白く果てしない道を歩くようなもの、ということ?
わからないけれどわからないから面白い。
 エントランスに入ってすぐ出会う、イン・シュジェンの作品。
衣服の布をクルクル巻いて、映画のフィルム缶のように並べてあります。
カラフルで小さい服は子供の服、シックな色合いは大人の男性のものだろうか、
どんな人が着てどんな人生を歩んでいたんだろうと、想いを馳せらされます。
通路を人々が螺旋状に動かされる様子をみると、
人間が完全に作品に取り込まれているのがよくわかります。
 一番印象に残っている作品。スン・シュンのアニメーション映像。
黒、白、青を基調とした不気味な背景に不気味な人物
夢のようであり日常の世界、あるいは現実の先の現実。まさに超現実。
この空間には大好きなルネ・マグリットの作品もありました。
一度部屋をでましたが、どうしても頭から離れなくて
もう一度この映像を見る為に再入場したくらい強烈な印象を受けました。
ずーっと見ていたい、この目先で繰り広げられる世界観を焼き付けたい、
いっそこのまま引き込まれてしまってもいい、なんて思ってしまいました。
こちらはライアン・ガンダーの「何かを描こうとしていていたまさにその時に
私のテーブルからすべり床に落ちた一枚の紙」というタイトル。
後ろの映像作品はリヴァーネ・ノイエンシュワンダーのもの。
映像作品とのリンクが面白い。
ひとつのクリスタルボールだけふわりと浮かんでいるよう。

ここで母と姉は一足先に福岡へ帰ります。
東京で一人きりなんて生まれて初めてで、ここで一気に不安と孤独が押し寄せてきます。

横浜トリエンナーレは会場が3つあり、そのうちの2つをまわりました。
バスにのって日本郵船海岸通倉庫へ。
倉庫の外から撮った写真。日が暮れる一歩手前の空が美しい!
この時間帯に一番センチメンタルを感じたりします。
 倉庫と名のつくだけあって、中はコンクリートで作品がなければ殺伐としているであろう会場。
自然を用いた作品が多くありました。
 山下 麻衣+小林 直人の作品。
海で砂鉄を集める映像と、砂の山とその頂上にささったひとつのスプーン。
リ ヴァーネ・ノイエンシュワンダーは、触って遊べる作品。
アルファベットやひらがなのプレートが並んでおり、
誰でも位置を変えられるようになっています。
単語をつくったり、自分の名前を並べたり、各々楽しんでいました。
卵の作品は、光に当てるとひらがなが卵の表面に浮かびあがります。
作り方は作者にしかわからないそう。
 これは三人の猿の面をかぶった人たちがアナウンスの指令に従って
それぞれのグッズ(テレビの前にある品々)でいろんな動作をする映像。
 シュールな笑いを誘うものでした。

空間の広い倉庫を十分に使ったダイナミックな作品が多かったです。
現代アートでおなかいっぱいになって、夜の横浜をぶらり歩いてみました。
こんな贅沢なデートスポットはないのではなかろうか。
とにかくロマンチック!
遠くに見える港に浮かぶ観覧車がグラフィック作品のように
異様なまでに輝いていてうっとりさせられました。
ゆずの曲で印象深い桜木町も歩いてみました。
くったくたになって無事神田まで帰宅。
東京初の本当に一人きりの夜、なんともいえない孤独感!
ちなみにこのあたりから森君時代のSMAPにハマりはじめていました。笑

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